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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)2898号 判決

本籍並びに住居

三重県員弁郡石榑村大字石榑南二四〇六番地

農業

伊藤一男

大正一五年三月二五日生

右窃盗被告事件について昭和二九年七月一九日名古屋高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人後藤昌次郎の上告趣意は、原判決は憲法三七条一項(所論中憲法三八条とあるは三七条の誤記と解す)に違反すると主張するが、同条同項の主旨は昭和二二年(れ)一七一号同二三年五月五日大法廷判決、(集二巻、五号四四七頁)によつて明らかであるから、所論は理由がない。(本件で原審が国選弁護人を選任したのは昭和二九年五月二八日であり弁護人は最終日六月一五日以前同月一二日附趣意書を提出し、しかも、それに基き弁護人は弁論もしているから防禦権を不当に軽視したかどはない。また、被告人の控訴趣意書については同年七月七日原審第一回公判において弁護人自己名義の控訴趣意書に基き弁論し「被告人名義の控訴趣意書は陳述しない」と述べたので原審はこれに対し判断しなかつたのであつて何等の違法はない「昭和二九年(あ)第四一八七号昭和三〇年四月一五日第二小法廷決定、集九巻、四号、八五一頁」「昭和二六年(あ)第三一三〇号同二七年一月一〇日第一小法廷判決、集六巻一号、六九頁」「昭和二五年(あ)第一七九七号同二五年一二月二五日第二小法廷決定」各参照。)

被告人本人の上告趣意について。

所論は、刑訴四〇五条適法の上告理由に当らない。

また記録を調べても本件において刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて刑訴四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 本村善太郎 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)

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